
高齢者は若い人に比べて脱水症状を起こしやすいと言われています。しかし、「なぜ高齢者は脱水になりやすいのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。本記事では、高齢者が脱水になる原因とその対策について、初めて介護をする方にも分かりやすく解説します。
高齢者が脱水になりやすい理由

(1) 体内の水分量が少ない
加齢に伴い、体内の水分量が減少します。成人の体の約60%が水分ですが、高齢者では50%程度まで低下すると言われています。このため、少しの水分不足でも影響を受けやすくなります。

(2) 喉の渇きを感じにくい
高齢者は喉の渇きを感じる機能が低下するため、水分補給のタイミングを逃しやすくなります。「喉が渇いていないから大丈夫」と思っているうちに脱水が進行することがあります。

(3) 腎機能の低下
腎臓の機能が低下すると、尿を濃縮する能力が低くなり、体内の水分を保持しにくくなります。そのため、頻繁に排尿してしまい、脱水が進行しやすくなります。

(4) 食事の水分摂取量の減少
食事から摂取する水分も重要です。しかし、高齢者は食事の量が減る傾向があり、その結果、水分摂取量も少なくなります。特に、噛む力や飲み込む力が低下すると、水分を多く含む食事(果物やスープなど)を避けがちになります。

(5) 持病や薬の影響
糖尿病や心疾患などの持病を抱えている高齢者は、利尿作用のある薬を服用していることが多く、これが脱水を引き起こす原因となることがあります。また、下痢や嘔吐を伴う病気にかかると、一気に脱水が進むこともあります。
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高齢者の脱水の症状

高齢者の脱水症状は、初期段階では気づきにくいことが多いですが、以下のような兆候が見られたら注意が必要です。
(1) 軽度の脱水症状

- 口や喉の乾燥
- 尿の量が減る、色が濃くなる
- 軽いめまいや立ちくらみ
- 倦怠感や集中力の低下
- 頭痛
(2) 中等度の脱水症状

- 皮膚の弾力が低下(つまんだ後に戻りにくい)
- 目がくぼむ
- 強い口の乾燥や唇のひび割れ
- 頻繁なふらつき、歩行困難
- イライラや混乱
(3) 重度の脱水症状

- 意識がもうろうとする
- けいれん
- 血圧の低下
- 速くて弱い脈拍
- 尿がほとんど出ない
重度の脱水症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
高齢者の脱水を防ぐための対策

(1) こまめな水分補給
高齢者は喉の渇きを感じにくいため、「1日1.5L以上の水分を意識的に摂る」ことが大切です。食事の際だけでなく、朝起きたときや入浴前後、就寝前などにコップ1杯の水を飲む習慣をつけましょう。
(2) 水分を多く含む食事を取り入れる
食事からも水分を補給できます。スープ、味噌汁、ゼリー、果物(スイカやみかん)など、水分を多く含む食品を意識的に摂るようにしましょう。
(3) 室内環境を快適に保つ
暑い環境では汗をかきやすく、脱水が進行しやすくなります。特に夏場はエアコンや扇風機を活用し、室温を適切に管理することが重要です。
(4) 持病や薬の管理
服用している薬の中に利尿作用のあるものがある場合は、医師と相談しながら適切な水分補給を心がけましょう。
(5) 介護者による声かけ
高齢者は自分で水分補給を忘れがちです。介護者がこまめに声をかけ、定期的に水分を摂取できるようサポートしましょう。
脱水になった場合の対応
(1) 軽度の脱水症状の場合

- すぐに水や経口補水液をこまめに飲ませる
- 塩分や糖分を適度に含む飲み物(スポーツドリンクや味噌汁など)を摂取させる
- 涼しい環境を整え、無理をせず安静にする
- 食欲がある場合は、水分を多く含む食事を摂取させる
(2) 中等度以上の脱水症状の場合

- 意識がもうろうとしている場合はすぐに医療機関を受診
- 点滴治療が必要になることがあるため、病院で適切な処置を受ける
高齢者が脱水になりやすいのは、体内の水分量の減少や喉の渇きを感じにくくなること、腎機能の低下などが原因です。しかし、定期的な水分補給や食事管理、室内環境の調整を行うことで、脱水を防ぐことができます。
脱水は自覚しにくいため、日頃から高齢者の体調をよく観察し、顔色や尿の変化に気を配ることが大切です。
「喉が渇いたら飲む」のではなく、「こまめに水分を摂る」習慣をつけることが重要です。日々のケアを心がけ、高齢者の健康を守りましょう。